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「宇都宮動物園に子犬が放棄された」捨て犬騒動に潜むペット問題

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2019年4月27日に宇都宮動物園に勤務する飼育員がブログに「許さない」と題した投稿をしました。2018年11月以降から3回にわたって動物園敷地内に子犬が合計20頭捨てられていたことを告発したところ、瞬く間に拡散。捨てたのは誰なのかと多くの憶測と非難が寄せられました。捨てられた子犬たちのうち1頭は動物園が引取り、ショーの出演を目指して特訓中。19頭は動物園が里親募集を行い、すべての子犬に新しい家族が見つかったそうです。しかし、里親が見つかったからといって、けっして安心はできないのです。なぜなら、この捨て犬騒動には、多くの問題が潜んでいるからです。

宇都宮動物園の飼育員ブログから抜粋

無責任に子犬を捨てたのは誰なのか

子犬は2018年11月中旬に4頭、2018年11月25日に7頭、そして2019年4月27日に9頭と3回に渡り、動物園関係者出入口前に段ボールに入れられた状態で捨てられていました。いずれもレトリーバー系の子犬で、捨てられた場所やその状況が似ていました。飼育員は放置した人物を下記の理由から同じブリーダー関係者ではないかと推測しています(宇都宮動物園 飼育員のブログ4月27日より
)。

①子犬の系統と性格が酷似している

性格は警戒心が強く怖がりな子ばかり。人を見て尻尾を振ることもなく、ただただ震えている。今まで20頭がすべてそうであった。

②捨てられている状況

同じような場所に捨てられていた。

③子犬が入れられている段ボールが同じ

ペットシーツを大量に箱買いしたのであろうと思われる段ボールを使用していた。

筆者は飼育員の推測は当たっていると考えています。まず、捨てられていた3回の日付けから考えると、少なくても3頭の母犬がいなければこの子犬たちは産まれてこないのです。2018年11月中旬に捨てられた子犬を生後2カ月と考えると、産まれたのは2018年9月中旬になります。犬の繁殖周期は通常6~12カ月。同じ母犬が最短の6カ月で再び交配できたとしても出産するのは2カ月後。2019年5月中旬という計算になるからです。そうなると、すべて別々の母犬から産まれた子犬であることが推測できるのです。繁殖には雄犬も必要であり、最低でも4頭の大型犬を飼育していることになります。一般家庭で大型犬を多頭飼育し、ここまで頻繁に繁殖をさせることは考えにくいといえるでしょう。

宇都宮動物園の飼育員ブログから抜粋

繁殖業者やブリーダーは同じ親犬やその子犬を残して繁殖をすることが多いので、子犬の顔立ちや体型、性格が似ています。顔を見ただけでどのブリーダーが繁殖した子犬かわかることもあります。今回の子犬たちのそれらが似ているということは、3回とも同じ繁殖業者やブリーダーが行った行為である可能性が高いといえます。また、警戒心が強く怖がりな子ばかりなのは、産まれてからほとんど人の手を加えられていないことが想像でき、愛情がまったくなく、利益だけを追求しているからだろうと思われます。捨てられている場所や状況が似ていること、ペットシーツを大量に購入したであろうと思われる段ボールに捨てられていたことも大きなポイントです。

子犬たちはなぜ捨てられたのか

捨てられていた子犬たちは血統書などがないため、純血種かどうかの判断は難しいと思います。飼育員はミックス犬なのではないかという推測をしています。しかし、ペットショップなどに卸している繁殖業者やブリーダーの所有する繁殖犬、繁殖猫は世界的に認められている団体のショーなどに出陳されることは少なく、その犬種や猫種のスタンダード(標準的な姿)から外れていることが多いのです。それらを考慮せずに繁殖されるため、産出される子犬や子猫も同様です。

例えば、「この子犬は本当にラブラドールレトリーバーですか?」と聞きたくなるくらいの子犬もいます。ですから、今回の子犬たちも推測でしかないのですが、大型犬の需要が減っていることから、純血種であっても取引先が見つからなかった可能性があります。また、多種の繁殖をしていることも多く、しっかりとした管理をしていなければ、レトリーバー系の犬同士などで誤交配が起こった可能性もあります。ミックス犬ではもちろん取引は難しいので、今回の行動に至ったのかもしれません。

また、大型犬の場合、生後1カ月の離乳時期を迎えるころには、小型犬の成犬よりも大きく成長します。そのころから固形物を食べるようになるため、排泄物も多くなり、母犬もトイレの世話をしなくなります。そこからは人間がサポートする必要があります。まだ、しつけができる時期ではないため、子犬たちはあちらこちらで排泄をしてしまいます。行動範囲も広くなり、それなりの飼育スペースも必要です。成長とともに食べる量も増すため経費もかかります。1回の出産で多頭を産む大型犬の世話は、考えている以上に大変なのです。そこに「命」に対する責任と深い愛情があれば、難なく乗り越えられるものですが、利益ばかりを優先する繁殖業者やブリーダーはそれが欠如しているため、取引先がなければ「廃棄」という考えになるのです。

2013年の動物愛護法の改正により、行政は動物取扱業者からの引き取りを拒否できるようになりました。法改正には動物取扱業者への「責任をもって犬や猫を路頭に迷わせないように行動すること」というメッセージが込められていたと思いますが、一部の繁殖業者やブリーダーの「廃棄」という考えは変わらなかったのです。そこで生まれてしまったのが「引取り屋」と言われる業者です。売れ残った子犬や子猫、繁殖を終えた親犬、病気になった犬などを繁殖業者やブリーダーから引き取り料をもらって引き取り、劣悪な環境で飼育する業者を言います。最近では保護団体を名乗っている「引取り屋」も出てきています。

その「引き取り屋」に払う引き取り料も惜しむ繁殖業者やブリーダーが、野や山に犬や猫を捨てている実態があります。今回のように動物園に捨てることで「誰かが見つけてくれるかも」という思いがあったとしても、捨てるという「命を危険にさらす行為」であることに違いはないのです。

犬などの愛玩動物を捨てることは動物虐待の罪になる

2013年9月に改正施行された「動物愛護管理法 虐待や遺棄の禁止」では、愛護動物を虐待したり捨てる(遺棄する)ことは犯罪で、違反すると懲役や罰金に処せられるとしています。

●愛護動物をみだりに殺したり傷つけたもの

 →2年以下の懲役または200万円以下の罰金

●愛護動物に対し、みだりにえさや水を与えずに衰弱させるなど虐待を行った者

 →100円以下の罰金

●愛護動物を遺棄したもの

 →100万円以下の罰金

動物愛護法では「遺棄」という定義がなされていなかったため、環境省が「動物の愛護及び管理に関する法律第44条第3項に基づく愛護動物の遺棄の考え方について(平成26年12月12日環自総発第1412121号)」を通知し、「愛護動物を場所的に離隔することにより、生命・身体を危険にさらす行為を「遺棄」として、関係自治体に具体的に示しました。

環境省の動物愛護管理法のページより抜粋

「飼養されている愛護動物は、一般的には生存のために人間の保護を必要としていることから、離隔された場所に関わらず、飢え、疲労、交通事故等により生命・身体に対する危険に直面する恐れがあり、遺棄に該当する可能性がある。」としています。簡単にいえば、ペットを捨てることは、ペットをその住処から生命・身体の危険に直面させる場所に置くことになり、それは「遺棄」にあたるということです。ですから、拾ってもらうことを目的に段ボールに入れて人目に付きやすい場所に置いたとしても、万が一のことが起こる可能性があり問題となります。罰せられる可能性は十分にあるのです。

今後、遺棄が増えるのではないかという懸念

数年前から大手のペットショップでは親犬や子犬の遺伝的疾患に関するDNA検査を推奨し、今年から大手2社は実際に店頭で販売する子犬・子猫の検査を開始しました。さまざまな反論や飼い主からのニーズに応えるために始めたことで、よいことではあるのですが、そのために生じてしまう問題の対策をしっかり取らないと大変なことになると考えています。

では、その検査をクリアできなかった子犬・子猫はどうなるのかというと、里親募集をするか、繁殖業者やブリーダーに返すということです。大手2社が始めたことの影響は大きく、それが業界の基準になってくるので、これから進むと思われる遺伝子検査の結果次第で、繁殖には不適応の親犬・親猫、遺伝子疾患を発症する可能性のある遺伝子を持つ子犬・子猫は「廃棄」の対象になってしまいます。繁殖業者やブリーダーが責任を持って飼い主を探すなどしなければ、無責任な遺棄が横行するのではではないかと懸念しています。もしかしたら、今回の件もこの遺伝子検査が関係しているかもしれません。

大手2社に子猫を卸しているブリーダーに状況を確認したところ、「遺伝子検査の結果が問題のない親猫から生まれた子猫、あるいは遺伝子検査で問題のない子猫しか引き取らないといわれています。問題がある親猫は繁殖できないし、すでに産まれている問題のある子猫も販売できないので、里親募集をするにしても数が多いし、どうしたらよいか頭を抱えています」との回答でした。

遺伝子検査は不幸な子犬や子猫を産出しないために必要なことです。大手ペットショップが先導して行うことはとてもよいことだと思います。ですが、同時に行わなくてはならないことは、はじかれてしまったすべての犬や猫を路頭に迷わせないということです。ペットショップ、繁殖業者、ブリーダーが連携して里親を募集し、飼い主に託す。それをまっとうしてこそ「よいことをした」と認知されると思うのです。今回の子犬たちのように遺棄されることがないよう、責任ある行動を願っています。

防犯カメラ設置の必要性

数年前、わが家の玄関先に5頭の子猫が捨てられていたことがありました。それは繁殖業者やブリーダーではなく、一般の方だと思われます。「産まれたのですが飼えないので、よろしくお願いします」と手紙が添えられていました。避妊手術もせず、無責任に子猫を産ませた結果です。その無責任さがさらに子猫を遺棄する行動を生みます。一般の飼い主でも今回の件と同じように遺棄する可能性は大いにあるのです。いずれにしても動物に対する愛情、責任の欠如の結果だと思います。

防犯カメラを設置していれば遺棄したのは誰なのか特定できました。宇都宮動物園の飼育員が言うように、そこに防犯カメラがあれば別の場所に遺棄したかもしれません。人の目に触れにくい場所であれば、そこで「命」が尽きてしまったかもしれません。しかし、だからといって遺棄した罪を野放しにしていれば、別の場所で罪を重ねるだけになるでしょう。「なぜ遺棄したのか」「そこにどんな問題があるのか」を知り、解決策を見つけなければ永遠にそれが続くことになります。

捨てられた場所は動物園であり、そこにはたくさんの動物がいます。捨てられた犬などが何か病気を持っていたら、動物園の動物たちが危険にさらされることもあるかもしれません。そういう意味でも防犯カメラは設置するべきだと考えます。防犯カメラだとわからないように設置の方法を工夫すれば、飼育員の不安も解決できることでしょう。

まとめ

繁殖業者やブリーダー、ペットショップなどペット業界に従事するものには、「命」に対する責任と深い愛情が必要だと考えます。それがあれば、おのずとどのような行動を取るべきかわかるはずなのですが、あまりに利益ばかりを追求するものが多すぎます。今回のような行為は決して許されるものではなく、今後のためにも罰せられるべきだと考えます。

今回の件は繁殖業者やブリーダーであろうと推測していますが、一般の飼い主である可能性もゼロではありません。生涯にわたり飼育する覚悟や知識のないまま、安易に飼い始め、避妊去勢をせずに繁殖してしまい、飼いきれず遺棄することも実際にあるからです。

「殺処分ゼロ」を目標に、行政も含め多くの動物愛護団体や個人が日々奮闘しています。一生懸命に飼い主を探しても、その数がいっこうに減らない理由は、一般の飼い主による安易すぎる飼育による放棄もありますが、利益だけを追求する繁殖業者やブリーダーにも大きな要因があります。現在のような誰もが簡単に登録し、繁殖できるシステムでは、「命」に対する責任や深い愛情が欠如しているものであっても容易に通過してしまいます。それを阻止するためには、繁殖に必要な総合教育を受けたうえでのライセンスの発行など、ある程度の選別が必要だと考えます。

宇都宮動物園・飼育員ブログの投稿は瞬く間にSNSで拡散されました。それは動物愛護の精神がかなり広まっていることを意味します。そのニーズに応えるためには、何よりも健全性が必要です。ペット業界全体が大きな変革をしなければならない時期にきているといえるでしょう。

元の投稿: 犬や猫とハッピーに暮らすための情報と最新ペットニュース - ペトハピ [Pet×Happy]
「宇都宮動物園に子犬が放棄された」捨て犬騒動に潜むペット問題

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