新車から30年以上経た5万キロ超えフェラーリ『512TR』が、新車価格の2倍近い約4140万円で落札
2026年5月16日から17日にかけて開催された「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ・オークション」では、1台のフェラーリが注目を集めた。ロットナンバー225として出品されたこの車両は、1993年式のフェラーリ「512TR」である。1980年代の名車テスタロッサの進化系として歴史に名を刻むこのモデルの魅力と、高額落札の理由となったコンディションについて紐解いてみたい。
テスタロッサの美学を受け継ぎつつ、さらに洗練された心臓部と内外装
「512TR」は、1980年代のアイコンであるテスタロッサの進化版として1991年から生産されたモデルだ。その名前は4.9リッター(4943cc)の12気筒エンジンを搭載していることに由来しており、テスタロッサへのオマージュが込められている。エクステリアは空力特性を最適化するために再設計され、インテリアも快適性と人間工学を向上させるべくリファインされた。
特筆すべきはその後方にマウントされた12気筒エンジンとトランスミッションのセッティングだ。ピストン形状の見直し、カムのプロファイル変更、バルブの大径化、ECUの完全電子制御への進化(ボッシュ・モトロニックM2.7)などを果たした結果、テスタロッサから38.5CVもの出力向上に成功。

最高出力は428CV(イタリア語表記では434CV)、最高速度は314km/hに達した。さらに、エンジンとトランスミッションのアッセンブリーはシャシーより低い位置にマウント(テスタロッサに比べ30mmダウン)されており、低重心化によるコーナリング時の安定性やハンドリング性能の大幅な向上が図られている。
24年間同じオーナーに愛された確かな歴史とメンテナンス記録
この個体が高く評価された理由のひとつは、その素性とメンテナンス履歴の透明性にある。1993年の夏にフランスの正規ディーラー「Charles Pozzi S.A.」を通じて新車でデリバリーされたこの車両は、ジャッロ(イエロー)のボディにネロ(ブラック)のレザーインテリアという爽やかなカラーコンビネーションを纏っている。

2002年には現在のベルギー人オーナーの手に渡り、以来24年間にわたって大切に保管されてきた。整備はベルギーの「Gipimotor」によって入念に行われており、直近の2026年3月にはエンジン等の動力伝達を担うタイミングベルトの交換や、フェラーリ特有の樹脂パーツの「ベタつき(sticky buttons)」を修理する大規模なメンテナンスが実施されている。
走行距離は新車時から5万1242kmにとどまっており、マッチングナンバー(シャシーとエンジンの番号がオリジナルであること)も確認済みだ。さらに、純正のスケドーニ製レザーラゲッジセットやツールキット、1997年発行の保証書のコピーなどが揃っている点も、コレクターの心を刺激する要素となっている。
「1993年式 フェラーリ512TR」のオークション結果
近年の海外オークションを見ると、512TRはおおむね3000万〜5000万円程度がひとつの相場となっている。走行距離や整備履歴、ボディカラー、オリジナル状態などによって価格差は大きく、状態の優れた個体では5000万円を超える落札例も見られる。今回出品された個体は、最終的に22万4250ユーロ(邦貨換算約4140万円)で落札された。現在の市場水準から見ても、コンディションや履歴を考慮すれば納得感のある結果といえるだろう。

1993年当時の512TRの新車価格をユーロ換算すると(当時ユーロは未流通)、約15万6000ユーロ(日本での新車当時価格は2380万円)だったことになる。今回の22万4250ユーロ(邦貨換算約4140万円)という落札価格は、30年以上を経た現在では512TRの価値がおよそ2倍に達するほど、市場では高く評価されていることを示す結果となった。
電動化やダウンサイジングが進む現代において、フェラーリ512TRは自然吸気の12気筒エンジンを背後に背負い、自らの手でシフトを操る特別な存在感を放っている。新車時から30年以上が経過しても色褪せることのないジャッロのボディと、手厚いメンテナンスによって守られてきたフラット12の鼓動。約4140万円という金額は、「跳ね馬」が持つ根源的な魅力と長年にわたって愛情を注がれてきた個体の価値を雄弁に物語っていると言えるのではないだろうか。
■The Concorso d’Eleganza Villa d’Este Auction 1993年式 フェラーリ「512 TR」の注目ポイント
◇ 履歴の透明性:24年間同じオーナーによって管理された完璧なメンテナンス記録
(ベルギーのGipimotorによる入念な整備が、車両のコンディションを高いレベルで維持している)
◇希少な付属品:純正のスケドーニ製レザーラゲッジセットとツールキット
(当時の雰囲気をそのまま残すコレクターズアイテムが揃っていることが、評価を高めている)
■車両情報
ロットナンバー:225
車両名:1993年式 フェラーリ 512 TR
オークション:The Concorso d’Eleganza Villa d’Este Auction(2026年5月16-17日)
ロットナンバー:225
シャシーナンバー:ZFFLA40B000097816
エンジンナンバー:34987
エンジン:4943cc 12気筒 / 最高出力:428CV /最高速度:314km/h
走行距離:5万1242km
エスティメート:22万〜25万ユーロ
落札価格:22万4250ユーロ
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ベルギーで24年間同じオーナーに愛されたフェラーリ512 TR。完璧な履歴の行方
