猫が見せる愛らしい寝姿。「左側を下にして寝る」猫が多いという興味深い傾向をご存じでしょうか? 近年の研究では、この一見何気ない寝相に、猫の脳のしくみや野生時代の生存本能が深く関係していることがわかってきました。
今回は、科学的根拠をもとに、猫の寝相に隠された心理や健康サインについて解説します。

最新研究が明かす 猫が「左側を下にして寝る」驚きの事実
猫の睡眠姿勢に関する興味深い傾向は、イタリアのバーリ・アルド・モロ大学をはじめとする国際的な研究チームによって明らかにされました。YouTubeに投稿されている飼い猫の動画、合計408本が詳細に分析されました。対象となったのは、猫が片側を下にして少なくとも10秒間寝ている様子が全身にわたって明確に映っているオリジナル動画のみであり、加工や反転された映像は除外されています。そのため、研究結果の信頼性を高めるための厳密な基準が設けられていました。
分析の結果、猫が横向きに寝る際には顕著な偏りがあることが判明しました。具体的には、266匹(全体の65.1%)の猫が左側を下にして寝ていたのに対し、右側を下にしていた猫は142匹(34.8%)にとどまりました。この左側への偏りは、統計学的に非常に有意であると結論づけられています。
「統計的に有意」という言葉は、一般の人にはあまり馴染みがないかもしれません。単なる偶然やたまたまの偏りではなく、科学的に「明確な傾向がある」「意味のある差がある」ことを意味します。
今回の研究で示された「p値が0.001未満」という数値は、「猫が左側を下にして寝る傾向」という結果が、仮に完全にランダムに猫が寝る場合でも、偶然によってこのような偏りが生じる確率が0.1%未満であることを意味します。これは非常に低い確率であり、「左側を下にして寝る」という行動が、猫の集団レベルで見ても確かな傾向として存在しており、その背後には生物学的な理由があると強く示唆されています。
専門的な統計手法によって導き出されたこの事実は、単なる観察にとどまらず、信頼性の高い科学的知見として受け止めることができます。科学的な裏付けがあることで、私たちは愛猫の行動に対する理解を、より深めることができるのです。
なぜ「左側」なのか? 猫の脳と生存本能の関係
猫が左側を下にして寝るという明確な傾向は、彼らの脳の機能的な特性と深く関係していると考えられています。野生で生き抜くために備わった巧妙な「生存戦略」の一部である可能性が高いのです。
右脳と左視野の関係
猫が左側を下にして眠ると、左視野が自分の体に遮られず、広く開かれた状態になります。人間と同様、猫の脳も左右の半球で異なる役割を担っています。特に左視野から入ってくる視覚情報は、脳の右半球、つまり「右脳」で処理されるという基本的な仕組みがあり、この構造が猫の睡眠姿勢に影響している可能性が指摘されています。
右脳は「脅威処理」に優れている
哺乳類において、右脳は特に「脅威の処理」に優れていることが知られています。右脳は、論理的思考を担当する左脳とは異なり、ひらめきやイメージで素早く情報を処理し、即座に判断する能力に長けています。研究では、捕食者が左側から接近した場合、動物はより速く反応するという傾向が確認されており、これは右脳が危険を迅速に察知し行動を促しているためとされています。
扁桃体の役割
脳の奥に位置するアーモンド形の「扁桃体」は、恐怖や不安といった感情の処理、さらには記憶の形成に関与する重要な部位です。特に右扁桃体は、脅威に対する恐怖の処理に深く関わっているとされており、猫が左側を下にして寝る姿勢は、この右扁桃体を含む右脳で外部からの刺激を素早く察知・処理するための理にかなった体勢であると考えられます。
素早い反応を可能にする利点
これらの要素を総合すると、猫が左側を下にして眠ることで、左視野が開かれ、右脳によって外部刺激が迅速に処理されやすくなります。その結果、目覚めたときにすぐに反応できる体勢となり、捕食者から逃げたり、獲物を察知したりするうえで進化的に有利だったと考えられます。
現代の飼い猫であっても、こうした野生時代の本能は脳に色濃く残っており、周囲の危険を常に察知し、迅速に対応する仕組みが備わっているのです。愛猫が左側を下にして無防備に眠る姿には、そうした本能の名残が表れているともいえます。飼い主として猫の行動をより深く理解し、安心して過ごせる環境づくりを心がけるための大切なヒントになるでしょう。
そのほかに要因もある? 左側を選ぶ可能性を探る
科学的な研究では、主な仮説の検証に加えて、結果に影響を及ぼす可能性のある他の要因についても広く検討が行われます。猫が左側を下にして寝る傾向についても、いくつかの代替的な要因が考慮されましたが、研究ではそれらが主要な原因とは考えにくいと結論づけています。
妊娠
たとえば、牛など一部の動物では、妊娠中に左側を下にして横たわる傾向が見られることが報告されています。特に妊娠後期にはこの割合が増加するとされており、体の変化によって姿勢が制限される可能性が指摘されています。
しかし、今回の猫に関する研究では、分析対象となったYouTube動画からは、猫の性別や妊娠の有無を特定する情報が得られませんでした。この要因が猫の睡眠姿勢の偏りに影響している可能性は極めて低いとされています。研究の限界を明示することは、情報の透明性や信頼性を高めるうえで非常に重要です。
利き手
猫にも利き手があり、これが寝る姿勢に関係している可能性も検討されました。たとえば、自分の利き手を自由に使えるように、ある方向に体を傾けて眠るのではないかという仮説です。
しかし、これまでの研究によれば、猫の利き手には個体差が大きく、左利き・右利きの割合もほぼ半々であることがわかっています。よって、全体の65%以上が左側を下にして寝るという有意な偏りを、利き手の影響だけで説明するのは困難です。
これらの代替要因が主要因ではないことを検証することにより、冒頭で紹介した「脳の半球の非対称性に基づく生存戦略」という仮説の妥当性がより強く支持されます。このように、科学的結論に至る過程を明示することは、読者の科学リテラシーを高めるためにも有益です。

左側だけじゃない! 猫の寝相が示す気持ちと健康状態
猫の寝相は、ただの休息姿勢ではなく、そのときの気持ちや健康状態を表す大切なサインです。まさに「心の鏡」といえる存在であり、飼い主がそれを理解し、適切に対応することで猫との信頼関係を深めることができます。以下に、代表的な寝相とそれぞれが示す意味についてまとめました。
【仰向け(へそ天)】
お腹という急所をさらす無防備な姿勢で、「安心しきっている」「信頼している」というサイン。暑い時期には体温調節の役割もあります。
【横向き】
リラックスした状態で、深い眠りについていることが多い姿勢。「左側を下にして寝る」も含まれます。
【丸まる(アンモニャイト)】
お腹を守るように体を丸める防御的な姿勢。寒さ・ストレス・体調不良のサインの可能性があります。特に飼い主の近くではなく、暗い場所でこの姿勢を取っている場合は注意が必要です。
【香箱座り】
前足を体の下にしまい込んでいる姿勢で、リラックスしながらもすぐに動ける半覚醒状態。安心できる場所で見られやすいです。
【スフィンクス座り】
前足を前に伸ばして伏せる姿勢。警戒心を保ちつつ、いつでも立ち上がれる構え。外部への注意力が高い状態です。
【伏せの姿勢】
うつ伏せの基本姿勢で、香箱座りやスフィンクス座りも含まれます。長時間動かず、ほかにも異変が見られる場合は体調不良の可能性があります。
【脚を伸ばして寝る】
安心しきっており、リラックスした深い睡眠に入っている証拠です。特に若い猫によく見られ、体温調節や休息、エネルギー補給のためにも重要です。
【隠れた場所やいつもと違う場所で寝る】
普段寝ない暗い場所や狭い場所で寝ている場合は、不安・ストレス・体調不良のサインであることも。ほかの症状(食欲低下、下痢、嘔吐など)が見られた場合はすぐに受診を。
猫にとっての「睡眠」が持つ重要な意味
猫が1日に12~16時間も寝るのは、単に休息を取っているだけではなく、健康維持に欠かせないさまざまな役割を果たしているからです。
睡眠の重要性
猫の睡眠は、体力回復・免疫力向上・成長・ストレス解消・消化促進など、多岐にわたる重要な機能を担っています。食後にゆったり横になるのも、こうした回復や消化を助ける自然な行動です。
レム睡眠とノンレム睡眠
猫も人間と同様に、「レム睡眠(浅い眠り)」と「ノンレム睡眠(深い眠り)」を交互に繰り返しています。
☞ レム睡眠
夢を見ることもある浅い眠りで、筋肉は弛緩し、横向きなどリラックスした姿勢が多く見られます。
☞ ノンレム睡眠
体の修復や成長が進む深い眠り。筋肉がややこわばり、伏せのような姿勢が見られやすくなります。
猫は短いノンレム睡眠と比較的長いレム睡眠を繰り返しており、一見長時間眠っているように見えても、実際には深く眠っている時間はそれほど多くありません。
ここで注目すべきは、本記事のテーマである「左側を下にして寝る」という姿勢が、レム睡眠時に見られやすい寝相であるという点です。筋肉が弛緩して無防備になるレム睡眠中に、左視野を確保する体勢をとることで、脳の右半球が外的脅威を効率的に処理できるようになります。
これは、猫の睡眠サイクル・脳機能・本能が複雑に結びついた結果といえます。飼い主は、愛猫の寝相から眠りの深さや心理状態を想像し、適切な環境づくりや配慮につなげていくことが大切です。
まとめ
「左側を下にして寝る」という猫の習性は、右脳の働きを活かした生存戦略の名残である可能性が高いと考えられています。
また、寝相は猫の心理や健康状態を映す“心の鏡”でもあります。日々の寝姿をよく観察することで、愛猫の体調や気持ちの変化にいち早く気づけるかもしれません。寝相に込められた小さなサインを受け取り、猫との絆をより深めていきましょう。
元の投稿: 犬や猫とハッピーに暮らすための情報と最新ペットニュース - ペトハピ [Pet×Happy]
うちの子も? 猫が「左側を下にして寝る」意外な理由 寝相に隠された気持ち
