近年、大切な家族の一員であるペットの健康に対する意識は、ますます高まっています。特に食事においては、「より安全で体によいものを与えたい」という思いから、「無添加」と表示されたペットフードを選ぶ飼い主が増えています。
「無添加」と聞くと、「完全に何も加えられていない」「自然で安心」といった印象を抱きがちですが、この言葉が持つイメージと、実際の表示ルールや製造実態との間には、しばしば大きなギャップがあります。そうしたギャップは、誤解や混乱を招き、飼い主が本当に大切にすべき選択基準を見失わせてしまうこともあるのです。

人間用食品の世界では、こうした「無添加」表示をめぐる誤認を防ぐため、消費者庁が2022年に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を策定し、2024年4月から施行されました。このガイドラインでは、「無添加」「不使用」といった言葉の使用に対し、具体的かつ厳密な条件が求められるようになりました。
これまでに添加物の不使用表示に明確なルールがなかったため、原材料に添加物が含まれていても「無添加」と表示されてしまうケースや、実態以上によい印象を与える表現が見られました。
新たなガイドラインでは、「無添加」や「不使用」といった表示が、どのような文脈で使われるかが重視され、誤解を招きやすいパターンを10類型に分類して具体的に制限しています。たとえば、「何が無添加なのか」を明示せずに単に「無添加」とだけ表示することは、全面的に添加物が使われていないと誤認されるため、禁止されています。
また、「人工」「化学」など、法的に定義のない用語を使って印象を操作するような表示も不適切とされています。さらに、法律上そもそも使用できない添加物について「不使用」と表示したり、ある添加物を避けつつ、同様の機能を持つ別の物質を使っている場合にも、優良誤認を防ぐため表示が制限されます。
一方で、ペットフードの表示については、別の法体系と業界の自主ルールが適用されます。代表的なものが、「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」です。
ペットフード安全法では、製造基準や有害物質の規制が定められており、販売用製品には名称や原材料名、賞味期限、製造業者、原産国などの表示が義務付けられています。ただし、ここで注意が必要なのは、原材料に含まれる添加物の表示は「任意」である点です。
つまり、「無添加」と表示されている製品であっても、原材料由来で添加物が含まれている可能性があるのです。人間用食品との大きな違いであり、「完全な無添加」を期待する飼い主にとって誤解を招きやすいポイントでもあります。
さらに、公正競争規約では、製品に使用していない添加物が明確に記載され、製造過程でも一切使われていない場合に限って、「無添加」「不使用」と表示することができます。
また、通常は使用されていない添加物について、あたかも特別な配慮で不使用にしているかのように強調することは、他社製品との比較で誤解を与えるため禁止されています。
「ナチュラル」という言葉にも基準があり、天然由来の成分だけで構成されている製品にしか使えません。合成ビタミンやミネラルなどが含まれている場合には、その旨をはっきりと表示する必要があります。
このように「無添加」や「ナチュラル」といった表示は、私たちに安心感を与える一方で、必ずしも製品の中身を正確に伝えるとは限りません。そこで重要なのが、ペットフードの原材料表示をしっかり確認することです。
原材料は多く使われている順に記載されていますので、最初にどんな素材が書かれているかを見てみましょう。「鶏肉」「牛肉」「米」など、具体的な名称がある製品の方が、内容を把握しやすくなります。「肉類」「穀類」といった抽象的な表現が多い場合は、注意が必要です。
また、「保存料不使用」と書かれていても、実際には天然由来の酸化防止剤が使われていることもあります。言葉の裏にある意味や意図を、きちんと読み取る力が求められます。
そもそも、添加物はすべてが悪者というわけではありません。保存料や酸化防止剤は、製品の腐敗や劣化を防ぎ、安全性や品質を保つうえで必要不可欠な存在です。とくにドライフードなどは水分量が少ないため、長期間保存するためにはある程度の防腐機能が求められます。
また、ビタミンやミネラル、アミノ酸といった栄養添加物は、ペットの健康維持に必要な栄養素を補うために用いられます。これらの栄養素が添加されることで、「総合栄養食」としての基準を満たす製品が実現されるのです。
最終的に、ペットフードが愛犬・愛猫に合っているかを判断するためには、普段の健康状態をよく観察することが大切です。食欲や便の状態、毛艶、活動量などを日常的にチェックしながら、フードとの相性を見極めましょう。
フードを切り替えるときは、一気に変えるのではなく、少しずつ混ぜながら慣らすのが基本です。もし体調に変化が見られた場合には、早めに獣医師に相談するようにしてください。
「無添加」という表示は、たしかに飼い主の心を引きつける魅力的な言葉です。しかし、表示の意味や背景にある制度を理解することなく、イメージだけで判断してしまうと、本当に大切なポイントを見落としてしまうことになりかねません。
添加物の有無だけにとらわれず、その役割や必要性、そしてリスクを冷静に見極めることが大切です。情報リテラシーを高め、愛するペットにとって本当にふさわしいフードを選ぶ力を持っていたいものです。
元の投稿: 犬や猫とハッピーに暮らすための情報と最新ペットニュース - ペトハピ [Pet×Happy]
「無添加=安全」とは限らない? ペットフードを正しく選ぶための基礎知識
