警察庁生活安全局が発表した「令和5年における生活経済事犯の検挙状況等について」によると、昨年1年で動物を虐待として摘発された件数は181件で、前年比9%増となりました。この10年で約4倍にもなり、過去最多の件数です。
動物虐待事犯については、ペットが家族の一員と考える人が増加したことによる動物の愛護意識の高まりを背景に、検挙事件数は増加傾向にあります。
それ以外にも「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)の改正により、虐待行為がより明確に定義され、違反が厳しく取り締まられるようになったことも理由のひとつでしょう。
さらに、通報手段の多様化も考えられます。通信環境が整備され、高速で安定したネット環境が提供されています。また、SNSなど手軽で便利なコミュニケーション手段が広く普及しています。
個人の行動や情報が手軽にオンライン上で公開されるようになり、それは監視されることにもなります。その情報が通報されることで行政や警察が動くことになったり、直接社会的な制裁につながったりします。
また、昨今は報道機関がこうしたSNSの情報や動物虐待関連の事件などを取り上げるようになったことも挙げられます。こうした報道が増えることで、行政や警察が積極的に取り組むようになることがあるからです。
さきの警察庁の報道資料には、今後の取組についても言及されています。「行政的な権限や専門的な能力を有する関係機関・団体等との連携を強化し、不適正な飼養を行う者に対する継続的な指導等を働き掛けるとともに、関係機関の指導等に従わないなど改善がみられない場合は、警察において必要な捜査を行い、被疑者を検挙することにより続発防止を図る」としています。
さらに、「特に公共の場所や動画投稿サイトのような多数の者の目に触れる形で行われる悪質な事犯については、国民に大きな不安を与えるものであることから、被疑者の早期検挙に向けて迅速な捜査を推進する」とも言及されているとおり、警察がより動物虐待事案への積極的な関与を示唆しているように感じます。
これらの要因が組み合わさり、今後も動物虐待の検挙数が増加する可能性があります。その結果、よりよい動物福祉が実現されるのは誰もが望む未来でしょう。
動物虐待は、動物に強度の苦痛を与えたり殺傷することだけではありません。遺棄も含まれます。そして、遺棄には飼育放棄も該当します。昨今は、飼育放棄が増加しています。それも安易に手放す飼い主が増えています。安易に飼った飼い主だと考えられます。
では、動物虐待をなくすためにはどうしたらよいのか。法の厳格化や警察の積極的な関与にも限界はあります。重要なのは、教育と啓発にあると思うのです。
小学校では動物の飼育が減少しています。教育の方針やカリキュラムの変化や教員の働き方改革、さらには予算削減などによって仕方のないこともあります。しかし、動物の飼育を通じた命の尊さや責任の重さを学ぶ経験は、教育上非常に価値があると思うのです。
同様に、ペットを飼うこと、そしてその責任をしっかり啓発すべきでしょう。それは、生体販売を行うペットショップは責任をもって行うべきでしょう。販売する際には、犬種・猫種の特徴や飼育に関する情報を的確に伝え、ちゃんと飼育できるのかを考えさせる。さらに、すぐに販売するのではなく、考える時間を取らせることも重要です。
ペットを迎えるということは、安易であってはいけないと思います。飼う前にしっかり学び準備をする。そうすることで、飼い始めてから「こんははずじゃなかった」を防ぐことができるのです。
こうした取組は、ペットショップだけでなく、ブリーダーや愛護・保護団体もいえることです。譲渡するときには、その人が終生にわたり愛情をもって飼育できる人なのか。それを人間性だけでなく経済力からも判断すべきではないでしょうか。
少なからず、日本にも世界レベルの健全なブリーダーがいます。彼らは、犬や猫を我が子のように大切に育て、貴重な血統を後世に残すことに心血を注いでいます。
ですので安易に譲渡はせず、何度も面談をしたり話をしたりし、信頼できると確信できてはじめて譲渡します。譲渡してからも、犬や猫の生涯にわたり、飼い主とつながり続けサポートします。
また、しっかりと契約書を交わし、万が一飼えなくなった場合は引き取ったり里親を探すなど、最後まで責任をもっています。ですので、こうした健全なブリーダーの犬や猫が、飼育放棄されることはまずありません。
これは、ペットショップや愛護・保護団体にも参考にしてもらいたい重要な事柄です。販売・受け渡して終わりではなく、そこからがスタートであって、最後までサポートする。それが販売責任であり、譲渡責任だと思うのです。
今回の警察庁の報道発表に接し、あらためて販売責任と飼育責任について考えさせられました。
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【編集興記】動物虐待の摘発件数が過去最高に。警察庁の発表からみえるペット共生社会のいまと未来